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地域で慕われていた1人の警察官が5月13日、職務中の交通事故で命を落とした。

茨城県警土浦署神立交番所長の箱根勝美さん(60)。本年度に定年退職を控え、4月に誕生日を迎えたばかりだった。人柄は厳格で真面目な一方、猫を愛する柔和な一面もあった。管内の地図を頭にたたき込み、地域住民のために汗をかいた警察官人生だった。

「日常が、いとおしいものだったことに気付かされます」

 

妻の清美さん(62)は、遺影を見ながら静かに語る。

 

箱根さんは、警察官だった父親の背中を見て育った。茨城工業高等専門学校(ひたちなか市)を卒業後、父と同じ道に進んだ。

長年、刑事畑で活躍した。2007年には、県警史上初となるサブマシンガン(短機関銃)を押収。功績をたたえられ、県警本部長賞詞を贈られた。

 

カーナビには頼らず、細かい道までしっかり覚えてパトロールに臨んだ。「1、2分の差で変化が起きるといけない。呼ばれたらすぐ現場に行けるようじゃないと駄目だ」。警察官としての信念を清美さんによく語った。

 

18年4月、神立交番(土浦市神立中央3丁目)の所長に就いた。地域の講演会では積極的に防犯を訴え、独り暮らしの高齢者を特に気に掛けていた。

 

交番管内に住む吉田アキ子さん(91)宅には、毎日のように見回りに訪れた。吉田さんは「『おばちゃん、元気か』って今でも窓から顔を出してくれるんじゃないかって…」と声を震わせた。

 

事故はパトロールのさなかに起きた。箱根さんは5月13日、住民から不審者の相談を受け、バイクで周囲を巡回していた。午後1時48分ごろ、土浦市内の国道354号交差点で大型トラックと出合い頭に衝突し、亡くなった。県警などによると、トラック側は赤信号で進入したとみられる。

 

長男の悠樹さん(32)は「ルールに厳しい人だった。こういう事故は本人が一番悔しいんじゃないか」と残念がる。

 

殉職に伴い、同日付で、警部補から警視に特進した。自宅は石岡市内。遺影のそばには、箱根さんが好きだったコーヒーと、たばこ「メビウス」2箱が供えられている。かわいがっていた6匹の猫たちがそっと寄り添う。

 

愛猫のブラッシングが日課だった。清美さんは「厳格で真面目な昔ながらの警察官。でも、大の動物好きでした」。警察で預かった猫を「うちでもらうのはどうだろう」とよく悩み、飼ったこともあった。

 

灰色の雌猫「ラム」は、夜遅くに箱根さんが帰ってきても、走って玄関まで出迎えていた。死去から約3週間。ラムは今も時折、玄関の前で扉が開くのを待っている。

 

「お父さん、どうしちゃったんだろうね。さみしいね…」。清美さんはラムに優しく語りかけた。  茨城新聞クロスアイより


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